新開発の量子もつれ光源により、世界最大の超広帯域量子赤外分光を実現―広帯域赤外分光の小型・高感度化に貢献―

電子や光子などの量子は、通常の物体とは異なった振るまいをします。その量子の個々の振るまいや相関(量子もつれ)を制御することで、飛躍的な計算能力を実現する量子コンピューターや、盗聴不可能な暗号を実現する量子暗号、さらに、従来の計測技術の限界を超える量子センシングなど、「量子技術」の研究が精力的に進められています。特に、量子もつれ光を用いた「量子赤外分光」は、可視域の光源と検出器のみで、赤外域の分光が可能になり、物質や分子の鑑別に幅広く利用されている赤外分光装置の大幅な小型化・高感度化・低コスト化が期待される技術として注目されています。しかし、これまでは、量子もつれ光の帯域が赤外域で狭い範囲 ( 1μm以下)に限られており、量子赤外分光の帯域を制限していました。
今回、電子工学専攻の田嶌俊之 特定研究員、向井佑 同助教、岡本亮 同准教授、竹内繁樹 同教授らの研究グループは、島津製作所の徳田勝彦 主任研究員らの研究グループと共同で、波長2μm~5μmという広い波長域で赤外光子を発生する超広帯域量子もつれ光源を開発、それを用いた量子赤外分光に世界で初めて成功しました。今後、さまざまな物質の鑑別同定が、スマートフォンのカメラなどにも利用されているシリコン光検出器を用いた、小型で高性能な量子赤外分光装置により可能となり、医療やセキュリティ、環境モニタリングなどで活用されることが期待されます。
本成果は、2024年1月12日時現地時間に米国の国際学術誌「Optica」にオンライン掲載されました。

研究詳細

新開発の量子もつれ光源により、世界最大の超広帯域量子赤外分光を実現―広帯域赤外分光の小型・高感度化に貢献―

研究者情報

書誌情報

タイトル

Ultra-broadband quantum infrared spectroscopy(超広帯域量子赤外分光)

著者 田嶌俊之(京大)、向井佑(京大)、荒畑雅也(京大)、小田哲秀(京大)、久光守(島津製作所)、徳田勝彦(島津製作所)、岡本亮(京大)、竹内繁樹(京大)
掲載誌

Optica

DOI

10.1364/OPTICA.504450

KURENAI http://hdl.handle.net/2433/286740

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本件連絡先

 電子工学専攻 教授 竹内 繁樹 

  Mail:takeuchi[at]kuee.kyoto-u.ac.jp

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