マイクロ流路を利用したクモ糸形成プロセスの再現 -マイクロ流体デバイスによる生物プロセスの精密模倣-
材料化学専攻の沼田圭司教授(理化学研究所(理研)環境資源科学研究センターバイオ高分子研究チーム・チームリーダー)、チェン・ジャンミン特別研究員(研究当時)、マライ・アリ・アンドレス上級研究員、理研開拓研究本部新宅マイクロ流体工学理研白眉研究チームの土田新テクニカルスタッフⅡ、新宅博文理研白眉研究チームリーダーらの共同研究グループはマイクロ流体デバイスを利用し、自然界でクモが行う複雑な紡糸プロセスを模倣することに成功しました。
本研究成果は、高性能かつ環境に優しい高分子・繊維材料を製造するための技術の発展に大いに寄与することが期待されます。
今回、共同研究グループは、クモ糸を構成するタンパク質であるスピドロインを繊維に成形することを可能にするマイクロ流体システムを設計しました。クモが自然界で達成している紡糸機構と同様に、マイクロ流体デバイスはイオンの交換や、pH、せん断応力を制御することができ、水性条件下でスピドロインの自己集合を誘導し階層構造を有する繊維成形の実現を達成しました。興味深いことに、マイクロ流体デバイスにかかる圧力を調節することで、繊維の内部構造を制御することもできました。これは圧力がマイクロ流体流路内のせん断応力に直接関係しているためです。紡糸過程のせん断応力を増加させることで、スピドロインがクモ糸の強度を担うβシート構造をより多く形成できました。本研究は生化学、流体力学、高分子科学、および計算モデリングのさまざまな側面を組み合わせた学際的なアプローチにより達成されています。
本研究成果は、科学雑誌『Nature Communications』オンライン版(1月15日付)に掲載されました。
研究詳細
マイクロ流路を利用したクモ糸形成プロセスの再現 -マイクロ流体デバイスによる生物プロセスの精密模倣-
研究者情報
- 沼田 圭司 京都大学教育研究活動データベース
- 新宅 博文 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル |
Replicating shear-mediated self-assembly of spider silk through microfluidics |
---|---|
著者 |
Jianming Chen, Arata Tsuchida, Ali D. Malay, Kousuke Tsuchiya, Hiroyasu Masunaga, Yui Tsuji, Mako Kuzumoto, Kenji Urayama, Hirofumi Shintaku, and Keiji Numata |
掲載誌 |
Nature Communications |
DOI | |
KURENAI | http://hdl.handle.net/2433/286856 |