世界最長レベルのヘリセンの合成―置換基で覆わない新たな分子合成指針の実証―
有機化合物の合成は多くの場合溶液中で行われます。また、得られた化合物の基本的な物性も溶液として調べることが多く、溶媒に溶けない化合物は研究を進めることが困難です。物質が溶解するかどうかは分子と溶媒の相互作用(溶媒和)に依存するため、分子間の相互作用が有意に大きいと凝集して溶けにくい固体になります。したがって、平面性の高いベンゼン環などが連なった巨大な分子を合成する際には、分子間相互作用を小さくするために置換基と呼ばれるユニットを取り付けて分子を覆うことが一般的でした。
分子工学専攻の田中隆行 准教授、関修平 教授、高分子化学専攻の田中一生 教授、権正行 助教、および京都大学大学院理学研究科 松尾悠佑 博士課程学生(研究当時)らは、溶媒分子との水素結合を利用することにより置換基で覆わなくても溶解する一連のアザ[n]ヘリセンを合成し、世界最長のアザ[19]ヘリセンでさえも十分に溶解して物性測定が可能であることを実証しました。また、その基礎物性を系統的に調査し、新たな電子・光学材料としての可能性を示しました。本研究成果は、2024年6月13日に米国の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。
研究詳細
世界最長レベルのヘリセンの合成―置換基で覆わない新たな分子合成指針の実証―
研究者情報
- 田中 隆行 京都大学教育研究活動データベース
- 関 修平 京都大学教育研究活動データベース
- 田中 一生 京都大学教育研究活動データベース
- 権 正行 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル |
Synthesis of Aza[n]helicenes up to n=19: Hydrogen-bond-assisted Solubility and Benzannulation Strategy(アザ[n]ヘリセン(最大n=19)の合成:水素結合の補助による溶解性とベンゾ縮環の戦略) |
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著者 |
Yusuke Matsuo, Masayuki Gon, Kazuo Tanaka, Shu Seki, Takayuki Tanaka |
掲載誌 |
Journal of the American Chemical Society |
DOI | |
KURENAI | ー |