分岐構造を持つポリビニルアルコールの合成 ―ホウ素を活用して新しい特性を示す高分子材料を創出―
高分子化学専攻の西川剛 助教、金澤共晃 博士後期課程学生、大内誠 教授のグループは、接着剤や偏光フィルム・医用材料など幅広く用いられるポリビニルアルコールに効率良く分岐構造を導入することに成功しました。
ポリビニルアルコール(PVA)は日常生活のみならず先端研究の現場でも様々な目的で用いられる水溶性ポリマーです。一般的なPVAは酢酸ビニルのラジカル重合と重合後の加水分解によって得られ、直鎖構造を持っています。本研究ではこれまでほとんどモノマーとして用いられていなかったビニル基にホウ素が直接結合した化合物(ビニルボロン酸ピナコールエステル)のラジカル重合を行い、重合後に側鎖の炭素―ホウ素結合を酸化することで、多数の分岐構造を持つPVAが得られることを明らかにしました。今回得られた分岐PVAの物性は通常の直鎖PVAとは大きく異なり、例えば固体状態での結晶性が低く、室温の水に速やかに溶解するという興味深い特徴が見られました。また、酢酸ビニルとの共重合によって分岐構造の割合を調整できることも見出しました。今後、分岐構造を反映した新しい物性・分解性の創出と機能性材料への展開が期待されます。
本研究成果は、2024年7月12日に、国際学術誌「Macromolecules」のオンライン版に掲載されました。
研究詳細
分岐構造を持つポリビニルアルコールの合成 ―ホウ素を活用して新しい特性を示す高分子材料を創出―
研究者情報
- 西川 剛 京都大学教育研究活動データベース
- 大内 誠 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル |
Radical Polymerization of Vinyl Boronate Involving Backbiting Chain Transfer and Post-Polymerization Oxidation Affording Branched Poly(vinyl alcohol)s (ビニルボロン酸エステルのラジカル重合におけるバックバイティング型の連鎖移動反応と重合後変換を鍵とした分岐PVAの合成) |
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著者 |
金澤共晃、西川剛、大内誠 |
掲載誌 |
Macromolecules誌 |
DOI | 10.1021/acs.macromol.4c00744 |
KURENAI | ー |