強磁性体における圧磁効果を発見― 必然でありながら半世紀以上知られていなかった強磁性圧磁効果の初観測 ―
磁場中で物質が伸縮する効果を磁歪(じわい)と呼びます。通常の磁歪は磁場の二乗に比例する効果ですが、磁場の一乗に比例してひずむ効果を「圧磁効果(Piezomagnetism)」と呼びます。このひずみが磁場に比例するという性質から、圧磁効果は低い磁場で動作するセンサーやアクチュエーターなどへの応用も期待できます。この圧磁効果の基礎理論は1950年代に確立され、その後十数例程度の圧磁効果物質が発見されてきました。この基礎理論は、「磁石にくっつく物質」である強磁性体は必然的に圧磁効果を示すことを予言します。しかしながら、これまで強磁性体における圧磁効果の報告例はありませんでした。この、必然でありながら半世紀以上も報告されていなかった原因として、通常の強磁性体が形成する磁区によって圧磁効果が打ち消されてしまう点が考えられます。
電子工学専攻の米澤進吾 教授、富川幹也 京都大学大学院理学研究科修士課程学生(研究当時)、荒木遼 同修士課程学生(研究当時)、同大学院理学研究科 石田憲二 教授らの研究グループは、東北大学金属材料研究所の青木 大 教授、仲村 愛 助教らと共同で、強磁性化合物URhGeが圧磁効果を示すことを発見しました。このグループは、URhGeの単結晶試料のひずみ-磁場曲線を、光ファイバーを用いたひずみゲージで複数の結晶方位に対して同時に測定し、圧磁効果に起因するV字型のひずみ-磁場曲線が特定の磁場方向のみで観測できることを見出しました。磁区が形成されにくい特殊な性質の強磁性体を用いたことがこの発見のカギになったと考えられます。この成果は圧磁効果を示す物質の探索幅を爆発的に広げ、圧磁効果の基礎的理解の大きな進歩や、応用に足る巨大圧磁効果物質の探索の指針を与えるものです。
本研究成果は、アメリカ合衆国の国際学術誌「Physical Review B」において、掲載論文のうち10%以下しか選ばれないEditors‘ Suggestionに選出され、2024年9月20日に同誌にオンライン掲載されました。
研究詳細
強磁性体における圧磁効果を発見― 必然でありながら半世紀以上知られていなかった強磁性圧磁効果の初観測 ―
研究者情報
- 米澤 進吾 京都大学教育研究活動データベース
- 石田 憲二 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル |
Piezomagnetism in the Ising ferromagnet URhGe |
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著者 |
Mikiya Tomikawa, Ryo Araki, Atsutoshi Ikeda, Ai Nakamura, Dai Aoki, Kenji Ishida, and Shingo Yonezawa |
掲載誌 |
Physical Review B |
DOI | 未定 |
KURENAI | ー |