パルスレーザーで生成した量子もつれ光を用いて 高分解能の量子赤外分光を実証―超高速現象を、小型・高感度で観察する新装置へ-

電子や光子といった個々の量子の振るまいや、複数の量子間の相関(量子もつれ)を制御することで、従来の計測技術の限界を超える量子センシングの研究が精力的に進められています。特に量子もつれ光を用いた「量子赤外分光」は、可視域の光源と検出器のみで赤外分光が可能になり、分光装置の大幅な小型化・高感度化・低コスト化が期待される技術として注目されています。励起光源にパルスレーザーを用いることで、非常に高速に変化する現象に対しても量子赤外分光が適用できますが、これまでは量子赤外分光の分解能が、パルスレーザー光源の帯域幅によって制限されると考えられていました。

今回、電子工学専攻のKaur Jasleen 博士課程学生、向井佑 同助教、岡本亮 同准教授、竹内繁樹 同教授らの研究グループは、同グループが提案した「量子フーリエ変換赤外分光法」では、その分解能が励起光源の帯域幅によって制限されず、高分解能測定が可能であることを理論的に明らかにし、検証実験に成功しました。今後、化学反応などで時間的に高速に変化する赤外吸収スペクトルを、可視域の光源と検出器を用いたコンパクトで高感度に測定する新たな手法として期待されます。

本成果は、2024107日に米国の国際学術誌「Physical Review Applied」にオンライン掲載されました。

研究詳細

パルスレーザーで生成した量子もつれ光を用いて 高分解能の量子赤外分光を実証―超高速現象を、小型・高感度で観察する新装置へ-

研究者情報

書誌情報

タイトル

High spectral resolution quantum Fourier-transform infrared spectroscopy with pulsed laser excitation(パルス励起光を用いた高分解能量子フーリエ変換赤外分光)

著者

Kaur Jasleen、向井佑、岡本亮、竹内繁樹

掲載誌

Physical Review Applied

DOI 10.1103/PhysRevApplied.22.044015
KURENAI

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