マルチスケール・マルチディメンジョン・マルチモーダルイメージング― 新しい統合材料解析技術の開発と先進自動車用鋼板への適用 ―
【発表のポイント】
- 特性や信頼性に優れた金属等の先端材料は、我が国のものづくりを支え、産業的な競争力の源泉です。その開発のため、従来の分析・計測法から飛躍した新しい材料解析法が望まれます。
- 最近、SPring-8では、マルチスケール(ナノ~マクロ)、マルチディメンジョン(3D/4D)という特徴を持つ先進イメージング技術が開発されました。この研究では、これにさらに結晶組織を解析するX線回折法を融合し、マルチモーダル材料解析技術として完成させました。
- 従来、構造材料の分析には多数の機器を必要とし、手間がかかるわりに断片的で不確かな情報しか得られず、非効率でした。開発法では、1本の試験体を評価するだけでナノ・ミクロ構造とマクロ特性とを直接結ぶ確度の高い情報が得られます。次世代自動車鋼板に開発法を試用し、鉄鋼の精緻で効率的な制御指針が得られ、開発法の優位性・実用性が実証されました。
従来の材料評価・解析は、表面で得られる二次元(2D)情報に基づくため、破壊等の挙動を正確に把握するのは困難でした。SPring-8では、数年前にナノからマクロまでカバーするマルチスケール、3D画像を連続取得するマルチディメンジョンという特徴をもつ高エネルギー先進X線CT法が実現され、「何が、どこで、なぜ、どのように」を把握する試みがなされています。
材料工学専攻の平山恭介助教(現:香川大学創造工学部准教授)は九州大学大学院工学研究院の戸田裕之主幹教授と藤原比呂助教、SPring-8の竹内晃久、上椙真之両主幹研究員らと共同で、特殊な方式のX線回折技術を開発してこれを先進X線CT法に融合しました。これは、3つの計測・イメージング法を並列させて切替えながら、ただ1個の試験体を集中的に評価・分析・解析する、世界でも初めての本格的なマルチスケール・マルチディメンジョン・マルチモーダル(以下、3M)材料評価技術です。
研究グループは、次世代自動車用鋼板であるTRIP鋼にこの技術を試用しました。TRIP鋼に外力を加えた時の材料組織変化や損傷挙動をこれまでの材料解析より飛躍的に高い精度と確度で評価しました。そして、現象を規定する材料組織学的な因子を特定すると共に、ナノ・ミクロ材料組織を積極的に制御してTRIP鋼の特性を制御できる材料設計指針を解明することができました。
本研究成果は国際学術誌Acta Materialiaに2024年10月6日(日)に掲載されました。
研究詳細
マルチスケール・マルチディメンジョン・マルチモーダルイメージング― 新しい統合材料解析技術の開発と先進自動車用鋼板への適用 ―
研究者情報
- 平山 恭介 research map
書誌情報
タイトル |
Multimodal assessment of mechanically induced transformation and damage in TRIP steels using X-ray nanotomography and pencil-beam diffraction tomography(和訳:X線ナノトモグラフィーとペンシルビームX線回折トモグラフィーを用いたTRIP鋼の応力誘起相変態と損傷のマルチモーダル解析) |
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著者 |
Hiroyuki Toda(責任著者), Chiharu Koga, Kyosuke Hirayama, Akihisa Takeuchi, Masayuki Uesugi, Kyohei Ishikawa, Takafumi Yokoyama and Hiro Fujihara |
掲載誌 |
Acta Materialia |
DOI | 10.1016/j.actamat.2024.120412 |
KURENAI | ー |