一石三鳥⁉ 一つの共通中間体から効率的に半導体ポリマーを合成ー有機薄膜太陽電池の高効率化に向けてー

【本研究成果のポイント】

  • 材料合成の最終段階で置換基を導入すること(Late-stage官能基化)により、効率的に異なる官能基を有する半導体ポリマーの開発に成功
  • 開発した半導体ポリマーを用いることで従来のポリマーを用いた有機薄膜太陽電池に比べて電圧損失が抑制
  • エネルギー変換効率が約5ポイント向上

【概要】

高分子化学専攻の大北英生教授と広島大学大学院先進理工系科学研究科の尾坂格教授、斎藤慎彦助教(当時)、三木江翼助教らの共同研究チームは、材料合成の最終段階で官能基を導入するLate-stage官能基化により、効率的に半導体ポリマーを開発し、有機薄膜太陽電池(OPV)のエネルギー変換効率を向上させることに成功しました。

塗布プロセスにより作製できるフィルム状太陽電池であるOPVは、持続可能な社会の実現に向けて重要な次世代型太陽光発電技術として注目され、盛んに研究開発が行われています。近年、発電材料である有機半導体の開発が進み、そのエネルギー変換効率は飛躍的に向上しています。しかし、新しい有機半導体の開発には、母体となる化学構造に様々な官能基を導入するなどのスクリーニングが必要ですが、有機半導体は複雑な化学構造を持つため、合成に多大な時間と労力を要することが開発のネックとなっていました。今回、共同研究チームは、創薬分野などでよく用いられるLate-stage官能基化(材料合成の最終段階で官能基を導入する手法)によって、効率的に異なる官能基を有する半導体ポリマーを開発することに成功しました。さらに、開発した半導体ポリマーを用いたOPVセルを作製したところ、従来のポリマーを用いたOPVセルに比べて電圧損失が抑制され、その結果、エネルギー変換効率は約1.5ポイント向上し、世界水準に近い17.4%を示しました。本研究成果は、有機半導体の効率的な材料開発とOPVを含めた有機半導体デバイスの特性向上に向けた重要な指針となることが期待されます。

本研究成果は、202410月15日にWiley社が発刊するドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載されました。

研究詳細

一石三鳥⁉ 一つの共通中間体から効率的に半導体ポリマーを合成ー有機薄膜太陽電池の高効率化に向けてー

研究者情報

書誌情報

タイトル

“Efficient Derivatization of a Thienobenzobisthiazole-Based π-Conjugated Polymer Through Late-Stage Functionalization Towards High-Efficiency Organic Photovoltaic Cells”

著者

Hiroto Iwasaki, Kodai Yamanaka, Yuki Sato, Tsubasa Mikie, Masahiko Saito, Hideo Ohkita, Itaru Osaka.

掲載誌

Angewandte Chemie International Edition

DOI 10.1002/202409814
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