気候変動緩和策による土地利用改変が大きい地域ほど 生物多様性の保全効果は低くなる-植林とBECCSの大規模導入が生物多様性に与える影響-
ポイント
- 植林とBECCSの大規模導入による気候変動緩和策の実施は、気候変動の進行を抑制することで地球規模では生物多様性の減少を軽減できますが、緩和策を大規模に実施した地域ほど、生物の生息環境が改変されるため、その軽減効果が小さくなることが分かりました。
- 土地利用改変を伴わない緩和策を着実に実施するなど、特定の地域に影響が偏らないような緩和策を考える必要があります。
都市環境工学専攻の藤森真一郎教授、長谷川知子特定准教授と国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所、立命館大学、国立研究開発法人国立環境研究所との研究グループは、植林やBECCS(バイオマスエネルギーの利用と利用時に発生する二酸化炭素の回収・貯留を組み合わせた技術)の大規模導入による気候変動の抑制が地球規模の生物多様性に与える影響について、シミュレーションモデルによる評価を行いました。
気候変動による気温上昇を産業革命前の1.5℃ないし2℃以内に抑えるために、植林やBECCSなどの土地利用ベースの気候変動緩和策が注目されています。しかし、これらの緩和策は、大規模な土地利用改変によって生物多様性に影響を与える可能性があります。そこで、2℃目標を達成するために植林やBECCSを導入した場合に生物多様性が受ける影響を、シミュレーションモデルにより評価しました。その結果、土地利用改変の影響を考慮しても、気候変動の抑制は生物多様性の減少傾向を軽減する可能性が示されました。ただし、土地利用改変の割合や炭素隔離量が大きい地域ほど、生物多様性の減少傾向が強まる傾向がありました。これらの結果は、緩和策としての土地利用改変が生物多様性に及ぼす影響は、実施規模が大きい地域ほど大きくなるため、実施にあたっては影響が特定の地域に偏らないような配慮が必要であることを示しています。
本研究成果は、2024年5月16日にCommunications Earth and Environment誌で公開されました。
研究詳細
気候変動緩和策による土地利用改変が大きい地域ほど 生物多様性の保全効果は低くなる-植林とBECCSの大規模導入が生物多様性に与える影響-
研究者情報
- 長谷川 知子 research map
- 藤森 真一郎 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル |
The choice of land-based climate change mitigation measures influences future global biodiversity loss |
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著者 |
Akiko Hirata, Haruka Ohashi, Tomoko Hasegawa, Shinichiro Fujimori, Kiyoshi Takahashi, Kazuaki Tsuchiya, Tetsuya Matsui |
掲載誌 |
Communications Earth and Environment |
DOI | |
KURENAI | ー |