様々な感染症の流行時に人々が取る行動を数学的に予測する ―健康リスクと社会的コストの最適バランスはナッシュ均衡で決まる―
東京大学 生産技術研究所のサイモン・シュニーダー特任助教、化学工学専攻のジョン・モリーナ助教および山本量一教授、英国ウォーリック大学のマシュー・ターナー教授からなる国際研究チームは、感染症の流行におけるソーシャルディスタンスの役割を、数学的手法を用いて明らかにしました。危険な感染症の流行に直面すると、人々は社会経済的なコストを払いながらも、感染による健康リスクを減らすために自発的にソーシャルディスタンスを取るようになります。この現象はこれまで数値シミュレーションを用いて研究されてきましたが、解析的に厳密解を導き出すことは困難でした。
本研究では、合理的な判断に基づいて時間的に変化する集団の行動を導き出すことを可能にする新しい数学的手法を活用し、感染症流行の進行過程に関する深く直感的な洞察を得ることに成功しました。例えば、「人々が取るソーシャルディスタンスの強度は、その時々の感染者数に比例するべきである」という分かりやすいルールを解析的に導出しました。この研究で得られた知見は、個人だけではなく、政府などの公的機関が、過去の経験のみに頼らず最適な政策を立案する際にも有益です。
研究詳細
様々な感染症の流行時に人々が取る行動を数学的に予測する ―健康リスクと社会的コストの最適バランスはナッシュ均衡で決まる―
研究者情報
- MOLINAーLOPEZ JohnーJairo 京都大学教育研究活動データベース
- 山本 量一 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル |
Understanding Nash epidemics |
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著者 |
S.K. Schnyder*, J.J. Molina, R. Yamamoto, M.S. Turner* |
掲載誌 |
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America |
DOI | 10.1073/pnas.2409362122 |
KURENAI | ー |