様々な脂肪酸含有脂質を細胞内小器官ごとに標識することに成功 ―脂肪酸代謝物の細胞内動態を解析可能に―

    合成・生物化学専攻の濵地格 教授、田村朋則 講師、木村天海 修士課程学生(研究当時)、川本青汰 修士課程学生らの研究グループは、生体膜の構成成分である脂肪酸含有脂質を細胞内小器官(オルガネラ)ごとに標識し、組成や分子構造、動態解析を可能にする新しい手法を開発しました。

    細胞内に取り込まれた脂肪酸は、リン脂質や中性脂質など様々な脂質へと変換され、生体膜の構成要素やエネルギー源となります。また、脂肪酸は鎖長や二重結合の数・位置の違いによって様々な種類が存在し、これが脂質の多様性を生み出すと同時に、脂質解析を複雑で困難なものにしています。本研究グループは、「アジド脂肪酸の代謝導入法」と「オルガネラに局在するクリック試薬」を組み合わせた独自のアイデアで、特定のオルガネラにある脂肪酸含有脂質を選択的に標識し、その種類や量の違いを高い精度で解析することに成功しました。また本研究では、オルガネラ間で脂肪酸含有脂質の種類・量の変動の様子が異なることを明らかにしました。この成果は、研究ツールの乏しさゆえに未解明な点の多い細胞内脂質代謝機構の解明に向けた大きなブレークスルーにつながると期待されます。

    本研究成果は、2025年6月17日に米国の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

    研究詳細

    様々な脂肪酸含有脂質を細胞内小器官ごとに標識することに成功 ―脂肪酸代謝物の細胞内動態を解析可能に―

    研究者情報

    書誌情報

    タイトル

    Subcellular analysis of fatty acid metabolism using organelle-selective click chemistry
    (オルガネラ選択的クリック反応による細胞内脂肪酸代謝解析)

    著者

    木村天海、川本青汰、藤沢有磨、吉田万桜、Shen Yuying, 土谷正樹、田村朋則、浜地格

    掲載誌

    Journal of the American Chemical Society

    DOI 10.1021/jacs.5c02871
    KURENAI

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