「色の変化」で目に見えない有害物質の存在を知らせる金属材料を開発 –3d遷移金属錯体で検出できる物質の拡大に期待–

    ガラス基礎科学講座の増野敦信 特定教授ら弘前大学大学院理工学研究科の村上辰成 大学院生(博士後期課程2年生)、太田俊 准教授、岡﨑雅明 教授の共同研究グループは、揮発性有機化合物(VOC)を検出する新たなメカニズムを発見しました。

    VOCは、常温常圧で揮発性を有し、大気中へと放出されやすい有機化合物の総称です。VOCの多くは、健康被害や大気汚染を引き起こすため、高価な分析機器を用いずにVOCを検出できる材料が求められています。そのような材料として、化合物の蒸気に応答して可逆的に色が変化する性質(ベイポクロミズム)を示す3d遷移金属錯体が注目されています。しかし、従来の3d遷移金属錯体のベイポクロミズムは高い配位能を持つVOCでしか起こらないため、検出可能なVOCの種類は限られていました。共同研究グループは、あるカチオン性のニッケル錯体がアセトンやジクロロメタンなどのVOCの蒸気に応答してベイポクロミズムを示すことを見出しました。さらに、このベイポクロミズムが対アニオンの可逆的な配位を利用する先例のないメカニズムで進行することを明らかにしました。
    本研究成果は、VOC検出に関して、既知の3d遷移金属錯体が抱えるVOC応答範囲の制限を解消する新たな方向性を提案します。今後、国内外において、このメカニズムを利用した様々なVOC検出材料が開発されると期待されます。
    本研究成果は米国化学会『Inorganic Chemistry』にFeatured Articleとしてオンライン掲載されました(2025年7月21日)。

    研究詳細

    「色の変化」で目に見えない有害物質の存在を知らせる金属材料を開発 –3d遷移金属錯体で検出できる物質の拡大に期待–構造常識を覆すトポケミカル反応の発見 ―カゴメ格子をもつ新しい二次元量子物質の創製に成功―

    研究者情報

    書誌情報

    タイトル

    Vapochromism Induced by Volatile Organic Compounds with Low Coordinating Ability in a Benzimidazole-derived N-Heterocyclic Carbene–Ni(II) Complex
    (ベンゾイミダゾール骨格を持つN-ヘテロ環状カルベン配位Ni(II)錯体が低い配位能の揮発性有機化合物により示すベイポクロミズム)

    著者

    Tatsunari Murakami(村上辰成), Atsunobu Masuno(増野敦信), Masaaki Okazaki(岡﨑雅明), Shun Ohta(太田俊)

    掲載誌

    Inorganic Chemistry

    DOI 10.1021/acs.inorgchem.5c02168
    KURENAI

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