液晶性発光色素により薄膜で実装レベルの円偏光発光を実現 -オプトエレクトロニクス分野への応用に期待-

高分子化学専攻の権正行 助教、田中一生 教授は、東京科学大学(Science Tokyo) 物質理工学院 応用化学系の飯田優斗 大学院生、小西玄一 准教授、関西学院大学 工学部の吉田浩之 准教授らの共同研究チームは、高濃度の液晶性発光色素により構成されたコレステリック液晶を用いて、液晶層の膜厚が従来の10分の1程度のデバイスに実装可能なレベルの円偏光発光を実現しました。
 コレステリック液晶は、分子がらせん状に配列した液晶場であり、特定の波長域の円偏光のみを選択的に反射する「選択反射」という光学特性を示します。カナブンの美しい金属光沢もこの選択反射に由来します。近年、コレステリック液晶中に発光色素を微量添加したCPLが盛んに研究され、次世代のセンシング技術や光通信技術への応用が期待されています。しかし、CPLは発光効率が高い一方で、外部刺激による発光のオン・オフや光の発信方向制御に必要な応答速度が遅いという課題がありました。そこで、液晶層を可能な限り薄く動きやすくする必要性が指摘されてきました。

本研究チームは、「液晶性を付与した有機π電子系の発光色素」を開発し、これを加えてコレステリック液晶を構築すれば、発光および選択反射の大幅な向上が期待でき、液晶層の薄膜化が実現できると考えました。さらにモデルを構築し、円偏光発光のメカニズムからCPLの値を高める因子を同定しました。実際に、研究チームが最近発表した、汎用液晶に混和性の高い液晶性蛍光色素を活用し、発光色素を約50%の高濃度で含むコレステリック液晶を作製したところ、2 μmという従来の10分の1程度の薄膜で高性能のCPLを達成しました。さらに、フェルスター型蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用することで、3原色(RGB)を発現することにも成功しています。

これらの結果は、CPLの発現機構の基礎的理解に貢献するとともに、円偏光を利用した不可視インクや円偏光性LEDなど、次世代の情報セキュリティ技術の根幹となる光学材料や素子開発につながるものです。本成果は、2月27日(現地時間)に、Wiley社が発行する凝集体科学・材料分野の国際学術誌「Aggregateインパクトファクター13.7)」のオンライン版に先行公開されました。

研究詳細

液晶性発光色素により薄膜で実装レベルの円偏光発光を実現 -オプトエレクトロニクス分野への応用に期待-

研究者情報

書誌情報

タイトル

Development of a Cholesteric Liquid Crystal Comprising a Mesogenic Fluorophore for Circularly Polarized Luminescence with a High Dissymmetry Factor(和訳:高い非対称因子の円偏光発光を指向した、液晶性蛍光体から構成されるコレステリック液晶の開発)

著者

Yuuto Iida,1 Masayuki Gon,2,* Hiroyuki Yoshida,3 Kazuo Tanaka,2 Gen-ichi Konishi,1,*(飯田優斗1, 権正行2,*, 吉田浩之3, 田中一生2, 小西玄一1,*

掲載誌

Aggregate(アグリゲート)(Wiley, IF 13.7

DOI 10.1002/agt2.70304
KURENAI

関連リンク

高分子化学専攻