有機薄膜太陽電池の長年のジレンマを解消 〜低炭素化社会の実現に向けて、ロスなく発電する技術の開発に成功!〜

高分子化学専攻の大北英生 教授、広島大学大学院先進理工系科学研究科の尾坂格 教授、三木江翼 助教、駿河翔太 氏(R5年度博士課程前期修了)、理化学研究所の但馬敬介 チームディレクター、中野 恭兵 上級研究員、筑波大学物質工学系の石井宏幸 教授、株式会社東レリサーチセンター形態科学研究部室長の稲元 伸 博士らの共同研究チームは、有機薄膜太陽電池(OPV)のトレードオフであり、高効率化に向けて重要な課題であった「低電圧損失」と「高効率電荷生成」の両立を実証しました。
今回、研究チームは、広島大学が新たに開発したポリマー半導体PTNT1-Fを発電材料に用いることで、従来のOPVに比べて電圧損失を大幅に抑制しながら、同等以上の高い電流を示すOPVの開発に成功しました。さらに、各種分光測定(広島大学、京都大学、理化学研究所)、電子顕微鏡観察(東レリサーチセンター)や量子化学計算(筑波大学)を駆使することにより、PTNT1-Fが従来のトレードオフを打破することができた起源を明らかにしました。

OPVは、軽量かつ柔軟で、塗布プロセスによる製造が可能な次世代太陽電池として注目されています。一方で、市販されているシリコンなど無機太陽電池や同様の塗布型太陽電池であるペロブスカイト太陽電池と比べると、OPVは電圧損失が大きいという問題があります。この電圧損失を抑制することは、OPVの高効率化に向けた重要な研究テーマとされてきました。しかし、OPVの発電原理上、電圧損失を抑制して電圧を高めようとすると、電流が減少する傾向があります。このような「電圧」と「電流」のトレードオフをいかに克服するかが、OPVの高効率化に向けた大きな課題でした。
本研究成果を基盤として、今後はポリマー半導体分子構造のさらなる最適化を進めることで、電圧損失を一層抑制しつつ高電流を両立する高効率OPVの実現が期待されます。本成果は、低炭素化社会の実現に向けた、環境調和型エネルギー技術の発展に貢献するものです。

本研究成果は、2026年3月23日(月)19時(日本時間)に、材料科学分野の国際学術誌「Communications Materials」誌(Springer Nature刊)にオンライン掲載されました。

研究詳細

有機薄膜太陽電池の長年のジレンマを解消 〜低炭素化社会の実現に向けて、ロスなく発電する技術の開発に成功!〜

研究者情報

論文情報

タイトル

“Backbone rigidity promoting hole delocalization and enabling efficient charge generation with minimal voltage loss in nonfullerene organic photovoltaics ”

著者

Shota Suruga, Tsubasa Mikie*, Yuki Sato, Kazuki Kohzuki, Jihun Jeon, Hyung Do Kim, Shin Inamoto, Hiroyuki Ishii, Kyohei Nakano, Keisuke Tajima*, Hideo Ohkita*, Itaru Osaka*

掲載誌

Communications Materials

DOI 10.1038/s43246-026-01115-y
KURENAI

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