分子設計の常識を覆す高スピン有機化合物の合成 ―[4n]π電子系の軌道エネルギーを自在に操り、特異な芳香族性を基底状態で実現―

化学理工学専攻の山田孟 修士課程学生(研究当時)、篠塚智仁 博士課程学生(研究当時)、清水大貴 助教、松田建児 教授らの研究グループは、従来の定説では低スピン(一重項)状態が安定になると予想されるKekulé(ケクレ)型の分子構造を有する有機分子に高スピン(三重項)基底状態を実現する新しい分子設計戦略を発見しました。閉殻構造式が描けるKekulé型構造を有する有機分子は一般に電子が2つずつペアを組んで安定化するため、磁性を持たない低スピン(一重項)状態をとることが常識とされてきました。しかし本研究グループは、分子の構造ではなく、フロンティア軌道のエネルギーを精密に制御することでこの常識に収まらない分子を設計できることを発見しました。

この分子設計指針を見出す鍵となった分子o-BenDは、分子構造からは低スピンと予測されるにもかかわらず高スピン基底状態を示します。さらに、o-BenDは通常は光励起された極めて短い寿命の間しか現れないBaird(ベアード)芳香族性を基底状態で発現していることを見出しました。本成果は次世代の有機スピンエレクトロニクスや量子情報技術における革新的な材料開発に向けた、新しい高スピン分子の設計戦略を提示するものです。

本研究は202669日、米国化学会の旗艦誌『Journal of the American Chemical Society』オンライン版に掲載されました。

研究詳細

分子設計の常識を覆す高スピン有機化合物の合成 ―[4n]π電子系の軌道エネルギーを自在に操り、特異な芳香族性を基底状態で実現―

研究者情報

論文情報

タイトル

Manifestation of Ground-State Baird Aromaticity in a Neutral Hexaazaphenanthrene Derivative with a Topologically Unanticipated Triplet Ground State”

(分子構造からは予測できない高スピン基底状態を示すヘキサアザフェナントレンにおける基底状態Baird芳香族性の発現)

著者

Takeru Yamada, Tomohito Shinozuka, Daiki Shimizu,* and Kenji Matsuda*

掲載誌

Journal of the American Chemical Society

DOI 10.1021/jacs.6c05109
KURENAI

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