—水道水の安全確保のために—

浅田 安廣

浅田先生写真京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻で助教をしています浅田安廣と申します。所属研究室は環境システム工学講座都市衛生工学分野であり、学部4 回生から同研究室で研究に取り組んでいました。現在はスタッフの一員として充実した日々を送らせていただいております。

研究室では上水道とその関連分野に関する研究に取り組んでおり、水源水質のモニタリング調査やカルキ臭評価、消毒副生成物、微生物リスク評価、浄水処理プロセスの高機能化、配水環境内の管理・制御など、広範囲にわたる研究テーマを扱っています。その中で、私は水道水の健康リスク管理の高度化に関する研究に取り組んでいます。

水道水の安全を確保するためには、配られる水道水の健康リスクを事前に把握し、制御・管理することが重要です。水道水の健康リスクとしては病原微生物による感染リスクと消毒剤注入により発生した副生成物(消毒副生成物)の化学物質リスクがあり、消毒剤の注入量が多いと微生物リスクは小さくなるが、副生成物リスクは大きくなるというトレードオフ関係が存在しています。この二つのリスクについては評価指標が異なることから、現在これらを同時に評価・比較することができない状況です。そこでヒトへの健康影響自体を定量化することができる障害調整生存年数(Disability Adjusted Life Years:DALYs)という指標に着目し、化学物質、微生物リスクをDALYs により評価する手法を構築することが私の研究の目標です。

目標達成に向けてまず取り組んだ研究テーマが、水道水の病原微生物による微生物リスク定量に関する研究です。この研究テーマでは、水道水源での病原微生物の存在実態調査、浄水処理での除去・不活化評価、疫学情報に基づいたリスクの定量化、という大きな3 つの研究課題があります。

水道水源での病原微生物の存在実態調査では淀川水系を対象として、病原細菌(カンピロバクターなど)や病原ウイルス(アデノウイルスなど)の存在量について季節変動も含めた年間調査を行っています。浄水処理での除去・不活化評価では、指標微生物を用いてラボスケールあるいはパイロットスケールで様々な処理プロセスの除去・不活化評価を行っています。最後に上記の研究課題で得られた成果や疫学情報などに基づき、定量的微生物リスク評価手法を用いてDALYs により水道水を飲んだ際の微生物リスクの定量化に取り組んでいます。今後は化学物質リスク定量化も含めて、水道水の健康リスク評価を高度化することを目指しています。

最後になりますが、私自身は学部4回生まで全く生物関係の分野、特に疫学分野に触れてきませんでした。そのため、毎日四苦八苦していましたが、その一方で新しいことを常に学べる楽しみもありました。学生にもこの魅力を伝えて、学生とともに成長しつつ、今後も研究と教育に精進していくことが私の日々の目標です。

(都市環境工学専攻 助教)

浅田先生図1

浅田先生図2