大学教員という研究者

高塚 康平

高塚先生写真私は平成19年に京都大学に入学した後、そのまま京都大学大学院の修士課程、博士課程と進学し、平成27年4月に大学院の助教に着任しました。

今携わっている建築に関心を持った最初の出来事は、記憶にある中では1995年の兵庫県南部地震だと思います。実際に地震が発生した際は関東に住んでいたため直接被害を受けたわけではありませんが、TVを通して見た地震後の被害の様子は、小学生ですらなかった私の記憶に20年以上経った今でも焼き付いています。その後、高校生になったときに数学と物理、特に力学に興味を持ったこともあり、京都大学の工学部建築学科に進学しました。

「建築学」と言っても分野は多岐に亘っており、建物の意匠設計・都市計画・生産設計などに重点を置く計画系、構造設計や耐震診断などに重点を置く構造系、空調・音響・照明など設計に重点を置く環境系の3 つに大きく分けることができます。将来の夢に合わせて自分の進みたい系列を入学した時点で志願し独自に勉強を始めていた同級生も多くいましたが、私には漠然とした「建築」への興味しかありませんでした。そんな私が建築学科で授業を通して多くの経験を積んでいくうちに、次第に実験を通して学んだことを実際に試してみたいと思うようになりました。

そこで、研究室配属の際に、力学などを用いつつ実験研究ができる構造系の研究室に配属を希望しました。そして、卒業論文の執筆を通して「研究」に興味が湧き、修士課程に進学した際に、建物の設計施工に携わるような職業に就くのではなく大学で研究を続けていく決意をし、そのまま同じ研究室で研究を行っています。

卒業研究から今に至るまで、鋼構造建物の柱梁接合部に着目し、近年発生が危惧されている南海トラフを震源とした海溝型地震が発生した際の柱梁接合部の耐震性能を調べる研究を続けています。実際の被害を目の当たりにするとこうした研究の重要性がよく分かるのですが、前述したように兵庫県南部地震発生時は関西にいなかったため、研究を開始した直後は研究の重要性を実感できていなかったと思います。しかし、平成23年の東北地方太平洋沖地震で遠く離れた大阪の高層ビルが揺れたことや、平成28年に発生した熊本地震での建物被害から、今の研究の問題点を実感しました。

私のように研究を職としていく上で研究対象の問題点を勉強し把握することは当然のことなのですが、多くの学生のように社会に出て建物の設計施工に関わる人にとってもこうした問題点を勉強することは大変重要だと考えています。私は研究者であるとともに大学の教員でもあるため、学生に指導することも大事な仕事なのですが、最近の大学生は兵庫県南部地震が教科書で習う歴史上の出来事となっていることもあり、実感してもらう事は非常に困難なようです。助教に着任して早2年となりましたが、研究者としての研究活動だけでなく大学教員としての学生への指導も併せて頑張っていきたいと思います。

(建築学専攻 助教)