学生時代の回想と現在

建築学専攻2010 年3 月博士後期課程修了 新谷 祐介

新谷博士 子供の頃から,家の間取りを考えることが好きだった私は,自宅から最も近い建築学科であった京都大学工学部建築学科に1999 年4 月に入学しました。2 回生から本格的に建築設計の授業が始まりましたが,ほどなく,空間をデザインするということには向いていないことに気づき,4回生になり研究室の配属の際には,熱環境の研究室への配属を志望しました。その後,卒業研究は,自動車の火災実験という物珍しさに惹かれて,自動車火災についての研究に取り組むことになりました。この時には,火災の研究が自分の仕事になるとは,思ってもいませんでした。
 当時の研究室には,多くの博士課程の学生が在籍していたこともあり,和気あいあいと活発な研究活動が行われていました。このことが研究の道を志すきっかけの一つとなったのではないかと思います。
しかし,なんといっても指導教官であった原田先生の影響が大きかったと思います。ありきたりな表現ではありますが,時に厳しく,時に優しい指導や,研究課題について正面から取り組む姿勢を教えて頂いたことが,研究の道を志す決め手になりました。修士課程に進み,その後の進路選択の際には,そのまま博士課程に進むことも考えましたが,一度社会に出たいというという思いもあったことから,就職することを決断し,2005 年4 月に,竹中工務店に入社することができました。入社後も,2007 年4 月に社会人として博士課程にすすみ,その際にも原田先生にご指導頂きました。3 年で無事に学位を取得することができましたが,現在も学協会活動等で,引き続きお世話になり続けています。
 竹中工務店では,技術研究所の防火グループの配属となり,現在も,技術研究所にて火災安全に関する技術開発とプロジェクトへの技術支援を行っていいます。技術開発では,火災安全性能設計に関する技術開発を一つの大きなテーマとしています。火災安全性能設計とは,建築物で火災が発生した際に,安全に人が避難できるか,建築物が崩壊しないかなどを工学的な手法で安全性を確認しながら設計をいいます。火災安全は,燃焼,伝熱,流体,人間行動,力学など様々な技術分野に関連するため,社内外の多くの方の力を借りながら技術開発をすすめています。また,技術支援では,実際の建築物へ火災安全性能設計の適用などを行っています。技術支援を行った建築物には,できるだけ訪問するようにしています。自分自身が建築設計や施工をすることはありませんが,それでも実際に建築物を造ることに携われるのはうれしく,建設会社で働いていてよかったと思えます。これからも,安全な建築物の実現に携わっていきたいと考えています。
 最後になりましたが,原田先生をはじめ,在学中・卒業後とお世話になった皆様に感謝し御礼申し上げます。


( 株式会社竹中工務店 技術研究所 構造部 防火グループ)