学部長あいさつ

大嶋先生名前入

「令和」という新たな時(とき)が流れ始めました。しかし、時(とき)は、いつも平穏で波風なく流れるわけではありません。令和元年の台風(19号)災害、そして、令和2年初頭からのコロナウイルスの世界的な流行、その感染防止策が導いた経済活動の低下、社会生活の困窮化など、平穏とはいえない状況をもたらしました。世界は広いようで狭く、人や社会の制御は単純ではないことを痛感させられました。また、一人ひとりに、的確な判断とは何かが問われました。

コロナウイルス感染は、大学生活を夢見て努力している皆さんや、大学に合格して揚々とした新入生生活を計画していた皆さんを、予想もしなかった世界に導いたのではないでしょうか。皆さんには、そんな堅忍持久の暗黒な世界でも、夢を捨てることなく、しっかりと自分の頭で考え行動して欲しいと思います。愚痴や批判や評論をするだけの人ではなく、自分で考え、行動できる人であって(になって)欲しいと思います。たとえ、令和という時代が、平穏でなく嵐が吹き荒れ続ける時代であっても、この時代を創造していくのは、若い皆さんです。自分で考えることのできるとした人物になることを目指して、学び続けて欲しいと思います。

さて、皆さんの多くは、まだ、大学でどの道を進むのか、工学に進むのか理学に進むのかなど、進路を明確に決めきれていないのではないでしょうか。工学といわれても、実際、何をする学問で、工学部で学ぶと、どのような能力が体得できるのかイメージが湧いていないのではないでしょうか。そのような皆さんは、工学部のホームページにある京都大学工学部の紹介冊子を見てください。京都大学工学部の設立の経緯から現在の姿まで、最新の研究事例の紹介を織り交ぜながらまとめています。

工学部はモノづくりのための応用研究をするところだと思われるかもしれません。しかし、京都大学工学部は、単にモノづくりの研究をするのではなく、「数学」「物理」「化学」「生物」の科学を基盤として、新たな原理や原則の発見、基本概念の構築をも目指し、基礎研究から応用研究まで幅広く展開しています。私たちは、京都大学の伝統である「自由の学風」のもと、既成概念にとらわれず物事の本質を自分の目でしっかりと見極め、基礎や原理をしっかり学ぶということを重視しています。「基礎や原理をしっかりと学んでおくことが、将来、幅広い応用研究の展開や技術の発展を可能とする。」という教育理念を堅持しています。応用研究を行う際にも、その研究の基礎となるもの、原理となるものを重視しています。この姿勢は、福井謙一先生や野依良治先生、最近では吉野彰先生が本学工学部の出身でノーベル賞を受賞されていること、また、今も、本学部の出身者にノーベル賞候補者が幾人もいることから、理解してもらえると思います。

 本学部には、地球工学科、建築学科、物理工学科、電気電子工学科、情報学科、工業化学科の6つの学科があります。それらの学科で、ダムや交通網の設計、水処理や廃棄物処理、防災、建物やインテリアの設計、ロボット開発、電気回路、量子コンピューティング、人工知能、新たな物質の創製、微生物、生命のことなど多種多様なことが学べます。学科の名前からだけでは想像できないような広範囲な教育研究が行われています。皆さんが、自身の将来のキャリアプランを設計するときに、工学部の中だけでもいろいろな選択ができるようになっています。

 工学部の4年間のうち、12回生で、6つの学科に共通する心理学や地理学など全学共通科目と呼ばれる教養科目、英語などの外国語科目、力学や有機化学など理系全般にわたる基礎科目を主として履修します。一方で、それぞれの学科特有の専門科目も1回生から少しずつ提供され、学年の進行とともにその重みが増していきます。4回生になると、皆さんは、研究室に配属され、特別研究(卒業研究)という、世界で誰もやったことがない研究課題に一人ひとりが取り組みます。この特別研究は、皆さんにとって、とても重要なものです。特別研究を通して、はじめて大学に来た意義を感じるはずです。1回生から3回生の授業の大半は、答えのある課題を与えられて解を導くという、高校での学びスタイルとあまり変わりません。しかし、特別研究で取り組む課題は、その正解が、取り組み当初は、教員も誰もわかりません。もしかしたら、正解がないかもしれません。また、研究が進むに伴い、教員が考えてもいなかった方向に発展していくことも多々あります。研究を進めていくと、いろいろな壁にあたり、悩むことがあると思います。その壁が高ければ高いほど厚ければ厚いほど、学べることが多いはずです。挫折しても構いません。挫折や失敗から学び将来の新たな研究に繋ぐのです。もしラッキーにも、研究が成し遂げられたなら、その喜びは格別なものとなるはずです。特別研究は、大学でしか味わえない、学びの喜びとの最初の出会いとなる貴重な機会です。

 ぜひ、本学部に入学していろいろな人と出会い、未来の社会のために学び続けてください。京都大学工学部は、皆さんが学び続けるにふさわしい場であると思います。若い皆さんには、自己の可能性を信じ、明日を信じて進まれることを強く願っています。この京都大学工学部は、皆さんが、望めば、得られるものがいっぱいあるところです。是非、いいものを見つけてください!