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研究科長あいさつ

大嶋先生 「令和」という新たな時(とき)が流れ始めました。しかし、時(とき)は、いつも平穏で波風なく流れるわけではありません。令和2年のコロナウイルスの世界的な流行、その防止策が導いた経済活動の低下、社会生活の困窮化など、一つの出来事が世界的な連鎖・波紋を生みました。世界は広いようで狭く、狭いようで制御が難しいことがわかりました。また、的確な判断とは何かということが問われました。原子力の問題、マイクロプラスチックの問題も同じ類の問題ではないでしょうか。では、このような問題に対して、私たち技術者や理系研究者は、何ができるのでしょうか。一つ明確に言えるのは、単なる評論家や批判家で終わってはいけないということです。私たち、技術者や理系研究者ができることは、どんな難しい問題であっても、あらゆる情報、データ、理論、経験に基づいて、一つのプラクティカルな解を見出して行動していくことではないでしょうか。物流や情報化が進み世界がさらに強く連動あるいは拮抗するなかで、これから起きる様々な問題に立ち向かい、様々なモノを創造し、社会に貢献していくためには、高度な専門性や創造性はもとより、豊かな教養と高い品格が求められます。そのために、学生の皆さんが今できることは、社会との連携のなか、積極的に学び、各分野において基礎をしっかりとしたうえで専門性と品格を身に着けることです。

京都大学大学院工学研究科では、京都大学の「自由の学風」の伝統と、己を知り己の人格を敬うべしとする「自重自敬」の高い品格涵養の精神のもとで、そのような研究者・技術者の育成を目指し研究と教育を行っています。また、学部および大学院において一貫して、「基礎となる学理をしっかりと学んでおくことが、将来の幅広い応用展開や技術の発展を可能とするために必要である。」という信念をもって、基礎や真理の探究を重視する教育を行っています。すなわち、私たちは、「なぜそのような現象が起こるのか?この課題を司る基本原理は何か?」など、ものごとを根本から考え、論理を積み上げて、解を創造していく能力を最重要視しています。問題の根源を探り、「真理の探究」がなされて初めて、世の中になかった新たな物質や、世界で誰も考えなかった独創的な技術を生み出せると考えています。この能力を涵養することが、本研究科の卒業生が未来社会の創造に貢献するためには必要であると信じています。この基礎や原理を重要視する姿勢は、福井謙一先生、野依良治先生、最近では吉野彰先生ら、ノーベル賞受賞者が京大工学部の出身であることからも、理解してもらえるかと思います。

 現在、本研究科は、17専攻、8センターで構成されています。大学院生の皆さんは、各専攻やセンターの研究室にそれぞれ配属され、教員の指導のもと特定の研究課題に取り組みます。その中で、専門的な知識を学修し、研究の遂行能力・研究成果の論理的説明能力をはじめ上述した能力を培っていきます。各専攻にどのような研究室があるのか、その研究室でのどのような研究が行われているのか、各専攻やセンターのウエブサイトを是非見てみてください。様々な研究がなされていることがわかります。また、学術研究における高い倫理性や国際性を育むための大学院共通科目や課外活動も提供されています。

研究を通しての大学院での学びは、解ける問題を与えられ、解を導き得点をとるという高校や学部での授業科目とは大きく異なります。研究の開始当初では、正解は教員も誰もわかりません。解が複数あるかもしれません。教員が考えてもいなかった方向に皆さんの研究が発展して行くこともあります。研究を通して、いろいろな壁にあたり悩むこともあると思います。困難であればあるほど学べることが多いはずです。また、困難であればあるほど、解決策を見つけたときや新たな発見をしたときの喜びは格別なものとなります。このような経験が、これからの時代で起こる様々な困難に立ち向かうための胆力となると信じます。

これからの時代、グローバリズム化はますます進みます。皆さんが、活躍する場所は、日本だけに限らず世界中のいたるところとなり、立ち向かわねばならない問題もよりグローバルでより難しいものになるでしょう。しかし、臆することはありません。皆さんには、無限の可能性があります。是非、その可能性を大切にして、理想と夢の実現に向けて、自分のキャリアパスを考え、大学院で学び、豊かな大学院生活を過ごして欲しいと思います。そして、皆さんが、未来社会の創造にそれぞれ貢献されることを強く望んでいます。私たち工学研究科の教職員は、「青は藍より出でて藍よりも青し(出藍の誉れ)」となる人材が多く巣立ち、未来の京都大学工学研究科や未来社会をリードしてくれることを夢見ています。

京都大学大学院工学研究科が果たしている学術文化や社会創造への貢献などを知ることにより、皆さんの夢と理想がより大きく広がることを願っています。