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長尾 真 元総長ご逝去に関しての追悼文

掲載日:2021/05/27

長尾 真 元総長ご逝去に関しての追悼文

 令和3年5月27日
京都大学工学部長・大学院工学研究科長

椹木 哲夫

 

 長尾真元総長が令和3年5月23日に逝去されました。突然のあまりに悲しいニュースに言葉もありません。長尾先生は、京都大学第23代総長として平成9年12月16日に就任される直前の平成9年4月1日~平成9年12月15日まで、工学部長(第43代)・工学研究科長(第2代)を務められました。先生の御尽力で現在の桂キャンパスが作り上げられ、工学研究科の移転が始まりました。現在、工学研究科大会議室(桂キャンパスBクラスター事務管理棟3階)の南側壁に140号特寸の大きな絵画「N先生像」と題する画が掲げられています。長尾先生が総長室の会議用大机の前に柔らかな表情で坐っておられる画で、辰巳寛画伯の筆によるものですが、長尾先生より平成17年4月に寄贈いただきました。また同じく桂キャンパスBクラスター事務管理棟3階の桂ラウンジの南側壁には、長尾先生の筆による「學術無窮」の書が掲げられています。知的な雰囲気と畏敬の念漂うお姿の画と、無限に果てしなく拡がる学術の世界への熱い想いを託された書に、私たちはいまも日々見守られ続けています。

 先生のご業績については、本学HPの湊長博総長によるコメントに詳しくございますので、ここでは私自身の先生との思い出について述べさせて頂きます。昭和55年から57年ごろでしたでしょうか、学部4回生から修士課程学生にかけてのときに、長尾先生が主宰されていた勉強会があり、学科も専攻も異なる私でしたがその勉強会に紛れ込ませてもらっておりました。言語や認知の先生方や博士・修士の学生がいろんな部局から集まっていた勉強会で、土曜日の午後から議論に花を咲かせ、その後はそのまま百万遍界隈での先生を囲んでの飲み会になだれ込むというのが常でした。いまひとつの思い出として、先生のご著書に『「わかる」とは何か』(岩波新書、 2001年)という著作があり、この内容に大きな感銘を受けたことを憶えています。科学的理解と人間的理解との差を縮めるにはどうしたら良いかについて、理屈の世界でわかっただけでは私たち人間は納得できず、感情的体験的世界においても納得することが必要であることを、ご趣味のゴルフでの例を巧みに引用されながら説かれています。言語研究や機械翻訳の最先端を率いてこられた先生ならではのご見識であると思いますが、巨大科学技術に対する警鐘を唱えられるとともに、科学によって奪われ、失われてしまった人間性を回復していくことの重要性を強調して締めくくられています。

 これまで先生から賜りましたご指導とご支援に心からお礼申し上げますとともに、ご冥福をお祈りしたいと思います。

 関連リンク

湊長博 総長からの長尾真 元総長逝去に関してのコメント