高温超伝導モータで超高速始動に成功 -自動車や航空機などへの実用に道筋-
高温超伝導体を用いるモータは、非常に大きな電流を極めて小さな損失(直流電気抵抗は0)で輸送できる同超伝導体の性質を利用することにより、高効率かつ高出力密度の回転特性が実現されます。そこで、同モータを利用した自動車や航空機などの輸送機器への実用が期待されており、特に航空機応用に関しては国内外で精力的な開発競争が展開されています。しかしながら、世界的に行われている従来の研究開発では、そのほぼ全てが一定回転数における特性のみを対象としており、回転数やトルクが時々刻々と変化する加減速状態において高温超伝導モータを安定に運転できるのか、殆ど調べられていませんでした。輸送機器用モータは特有の加減速運転をしなければならず、特に停止状態からの始動時には瞬間的に大きな電流が流れたり回転が不安定になったりします。
電気工学専攻の中村武恒 特定教授は、世界で最も汎用されているかご形誘導モータを対象にして、その高温超伝導化を研究してきました(高温超伝導誘導同期モータと呼びます)。この度、イムラ・ジャパン(株)と共に試作した20 kW級モータを対象として超短時間の高速始動特性を精密に測定し、極めて安定に始動できることを実証しました。この成果は、高温超伝導モータの加減速特性が殆ど明らかにされていない現状において、最も過酷な超高速始動に対する回転安定性を世界で初めて示すという観点から大きなブレークスルーと考えられます。
研究詳細
高温超伝導モータで超高速始動に成功 -自動車や航空機などへの実用に道筋-
研究者情報
- 中村 武恒 京都大学教育研究活動データベース