青藍プログラムの名に恥じぬ研究者を目指して

助教 鈴木肇

鈴木先生 私は2018年に物質エネルギー化学専攻で博士(工学)の学位を取得し,その後ポスドクとして大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻・佐伯昭紀先生の主宰する研究室にて1年2ヶ月お世話になった後,2019年6月に,学生時代の所属と同じ阿部竜先生が主宰する研究室の助教に着任いたしました。本学の助教として着任するにあたってはタイミングにも恵まれ,工学研究科において若手の雇用・育成を促進する目的で2019年度に創設された「青藍プログラム」で採用いただきました。本プログラムは,任期7年の間に1年程度海外に赴任して研究経験を積むことや工学研究科内での共同研究を支援いただける等,若手研究者を長期的に育成していただける制度です。私も実際に工学研究科内での共同研究の後押しをいただき,専攻内の共同研究(13報の論文掲載)に加え,専攻外の先生方とも共同研究を行うことで2報の論文掲載に至っています。現在,海外の赴任先も探索・検討中で,このプログラムを最大限に利用して研究者として大きく成長したいと思っております。

 現在取り組んでいる研究についても簡単に紹介させていただこうと思います。私は学生のころから一貫して「人工光合成系」の一つである半導体光触媒を用いた水分解(太陽光水素製造)の研究を行っています。本技術の実用化を目指し,太陽光スペクトルの大部分を占める可視光の有効利用が可能な水分解系の開発と,その性能最適化に取り組んでいます。可視光を有効に利用して水を分解可能な系として,植物の光合成メカニズムを模倣した二段階励起(Z-スキーム)型水分解システムが注目されています。この系は,水素生成用と酸素生成用の2種類の光触媒とその間の電子伝達を担う酸化還元対(レドックス対)により構成され,水分解に必要なエネルギーが二分割されるため,エネルギーの小さな可視光までの利用も容易になります。さらに,適切なセパレータを用いれば,水素と酸素の分離生成も可能となり,爆発の危険性も防ぐことができます。最近では,この系の最適化に向けて,特に複合アニオン化合物の一種である酸ハロゲン化物光触媒の開発に注力しています。

 最後になりましたが,青藍プログラムという名前は,青は藍より出でて藍よりも青し(出藍の誉れ)から付けられたとのことです。所属研究室の「藍」である阿部竜先生の色は強烈で,私がこのプログラムの名前に恥じない研究者となるには,これから相当精進しなければいけない状況です。任期の間に研究者としてどれだけ成長できるかわかりませんが,本プログラムで採用いただいた工学研究科に少しでも恩返しができるよう,また科学の発展に少しでも貢献できるよう,努力しますので今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。

(物質エネルギー化学専攻)