座右の銘を考えてみた

技術専門職員 野村 昌弘

野村昌弘_web.JPG 「人間万事塞翁が馬」この言葉を私が高校生の頃にとある雑誌で知りました。将来のことは予測できないという意味で,幸せなことが不幸に,不幸なことが幸せにいつ転じるか分からないので物事に一喜一憂しない,右往左往しないというたとえです。
 私は現在,建築学専攻の建築構造実験棟でクレーン作業や高所作業などの仕事をしていますが,採用される前まではこういう場所で働くことになるとは全く想像していませんでした。というのも元々建築についての勉強をしていたわけではなかったからです。私は大学では土木工学科を専攻し土質系の研究室に配属となり,地下に関係する勉強をして卒業論文のテーマは液状化現象に関する研究でした。そのことが影響していたのかもしれませんが,大学卒業後は下水道工事の推進工法を専門とする企業に就職しました。そこでは現場監督として働いていました。そして色々あって 2006 年に技術職員として採用され, 現在の建築学専攻の構造系の教育研究支援の担当となり,主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造,木造などの建築物の構造に関する研究支援を行っています。実際に柱や梁などの縮小試験体または実物大の試験体を製作し,油圧装置等で加力実験や振動実験を行っています。
 大学生のころは土質・地盤の勉強をして地下工事の会社に勤め,その後,現在の実験室では地下工事とは全く違う分野の仕事になりましたが,クレーンや油圧ポンプ,ジャッキ等を前職でも使用していた経験があり,仕事になじむまでにはそれほど時間はかかりませんでした。実験作業を進めるにあたり起こりえる問題について予測し,改善方法を考え,それに対応していくことに関しては過去の現場監督としての経験が生きているのだと思います。もちろん過去の経験だけで解決できることばかりではありません。前職では主に熟練の職人さん達と仕事をしていましたが,現在では実験の経験がほとんどない学生達との作業になります。しかも学生は実験に慣れてきたころに卒業し,新年度にはまた実験未経験の学生達と作業をすることになります。そのため毎年同じように注意事項や作業の基本について指導する必要があるのですが,学生によって受け取り方や反応が様々なので毎年試行錯誤の繰り返しです。
 今までの経験すべてが将来の役に立つとは思いませんが,思いがけない形で役に立つこともあるので, これからも目の前のひとつひとつにしっかり向き合い,様々な経験を積み重ねていきたいと思います。これまでの成功体験に慢心せず失敗体験に悲観せずということで,これからしばらくは「人間万事塞翁が馬」を座右の銘にしてみようかな。

(地球建築系グループ)