学生時代の回想と現在
都会への憧れとテレビで見た京都大学アメフト部の活躍の印象もあり漠然と京都大学を目指していた中,家族旅行で船からみた瀬戸大橋の巨大な橋脚に圧倒されて「スケールの大きな仕事をしたい!」と思うようになり,土木工学科(現在の地球工学科)に狙いを定め,運も味方して1993年4月に入学できました。
学生時代は,哲学の道近くの築40年,風呂無し,隙間風放題,古民宿仕様の学生寮(家賃は激安)に下宿し,吉田キャンパスを拠点に学生生活を謳歌していました。
研究室は,海岸工学研究室(現 沿岸都市設計学分野)に所属し,沿岸域での漂砂現象(浮遊砂)に関する研究を実施しました。流水中の砂粒子の挙動という当初想定よりもかなり小さいスケールの現象を解明すべく,水理実験や数値流体解析を実施しました。水理実験では流水中の砂の動きを高速度ビデオカメラでとらえるべく,ホームセンターに通って材料を仕入れては実験道具を製作し,照明やカメラ位置を試行錯誤しながら地下実験室で実験していたのは良い思い出です。
卒業後は電源開発株式会社に就職し,発電所土木設備の計画・調査・施工監理・保守・研究開発など,いろいろな業務を担当してきました。
入社後10年程度は,関東を拠点に北は青森,南は北九州へと概ね3年周期で転勤しながら,火力・原子力発電所施設の計画や技術開発,建設現場では敷地造成や港湾施設の施工監理を担当しました。転勤は多い方でしたが,それぞれの街で味があり,住めば都,先々で公私ともに素敵な経験ができました。
その後は,既設水力発電ダムの運用高度化を実現すべく,降雨予測やダム流入量予測技術開発を担当することとなりました。それまであまりなじみのなかった気象・水文予測の分野を勉強することになりましたが,大学時代の数値流体解析の経験がとても役立ちました。最近では,最新の気候変動予測技術を活用した水力発電施設のリスク評価や適応策の検討にも取り組んでおり,対象とする現象や時間スケールも大幅に拡大しました。
実は,入社以来,恩師である後藤仁志教授をはじめとして母校の多くの先生からいろいろな場面でご指導・ご助言頂きながら業務を実施しています。前述の既設水力発電ダムの運用高度化検討業務では,中北英一教授,堀智晴教授,立川康人教授のご指導をいただき,最終的に成果を論文に取り纏め,学位を取得することができました。
大学入学時の想定を超えて対象分野や活動範囲が年々拡大するとともに,母校の京都大学と密接にかかわりながら社会人生活を送っています。今後も,いろいろなことに興味を持ちつつ,母校とのつながりを大事にしながら,会社業務を通じて少しでも社会に貢献したいと考えています。
最後になりましたが,在学中・卒業後とお世話になった皆様に感謝し御礼申し上げます。
(土木工学専攻 1999年3月修了)