核磁気共鳴(NMR)装置の維持と研究支援

技術専門職員 日下絵里子

日下様 核磁気共鳴(NMR: Nuclear Magnetic Resonance)は,原子核が置かれた環境の差を区別することができ,原子核同士のつながりや分子の運動性など有益な情報が得られることから,幅広い分野で用いられる分析手法の一つです。
 様々な用途への利用がある一方で,高分解NMR装置は,超電導磁石であるために,設置場所に制限がある上に,装置価格は高額で,維持管理にかかる労力や経費も大きいという欠点があります。そのため,装置を集約して配置し,共同利用することは,研究室の負担軽減につながります。
 合成・生物化学専攻共通NMR室は,3台のNMR装置を保有し,主に技術職員が維持管理を行っています。ただ、維持のための予算があるわけではないため、専攻内の学生・教員による自己測定と、技術職員が受託する専攻・部局を超えた依頼測定の要した使用時間に応じた負担金を頂くことで、維持費を賄っています。
 私が着任して10年になりますが,その間に,二十数年使用していたシステムの更新や,新技術プローブの導入がなされ,従来よりも容易に,そして短時間での測定が可能になりました。導入後20年近く使用できる装置ではありますが,その時々の研究ニーズに合わせながら,効率よく稼働させるためには,部分的な更新を含めた使用環境の整備が必要となってきます。ここ数年では,有難いことに,液体窒素蒸発抑制装置やオートサンプルチェンジャーの導入など,老朽化した周辺機器の更新とハイスループットな測定環境作りに投資することが出来ています。
 さらに,装置の高性能化に伴う測定技術の研鑽も重要な課題だと認識しています。磁場勾配やパルスシーケンスの改良により測定時間の短縮や新たな測定法の開発がなされたこと,何よりもマニュアル制御からオート制御になったことで,ユーザーの使い勝手が向上し,複雑な測定へのハードルが大きく下がり,測定の幅がより広がっています。その結果,依頼や相談される測定内容にも変化が生じており,有機合成確認等の構造解析だけでなく,拡散係数,化学交換など,化合物の動的な観測を目的とした測定が増えてきています。より個々の研究に寄り添った専門的な知識が必要になっていると感じています。ただ,残念ながら,ひとつとひとつの研究に費やせるマンパワーがなく,次から次へとくるサンプルに,その一時向き合うのが精一杯なのが実情となっています。目的に見合う解析法を提案していけるよう,情報収集し,整えていくことが必要と認識しています。
 技術がどんどん更新されていく中,この先も,必要とされる測定技術を最新の状態で提供できるように,装置のアップデートを画策するとともに,新たな測定法に付随する解析法をも習得していくことで,教員・学生の研究活動を支援していきたいと思います。

(化学電気系グループ)

 

高感度プローブがついたNMR装置(ECZ600RJEOL製)
高感度プローブがついたNMR装置(ECZ600RJEOL製)