「桂結」登録機器の紹介
2009年4月に採用いただいてから,材料工学専攻で主に各種分析装置の維持管理,操作方法指導業務を行っています。2024年後半に担当装置を設備サポート拠点「桂結」の共用機器として登録する機会に恵まれましたので以下の3台についてご紹介します。
・アルバック・ファイ(株)製 多機能走査型X線光電子分光分析装置 PHI VersaProbe4
直径10~200μmのビームを10μmから1.4mm×1.4mmまで走査可能な単色化アルミニウム X線源を搭載した,固体表面10nm程度の深さの化学結合状態や組成に関する情報を得るX線光電子分光分析装置(XPS)です。非単色化アルミニウム/マグネシウムX線源も搭載しています。単原子アルゴンイオン銃やアルゴンガスクラスターイオン銃のエッチングによる深さ方向分析が可能です。自動帯電中和補正機構を搭載しており,絶縁物を含む試料も比較的安定してXPS測定を行えます。オプションとして紫外光電子分光分析(UPS),低エネルギー逆光電子分光分析(LEIPS),反射電子エネルギー損失分光分析(REELS)を行えます。厚さ2mm以下で5mm×5mmから12mm×16mmまでの真空中で安定な固体試料が主な測定対象で,粉末試料は利用不可です。1時間あたりの利用料金は,材料工学専攻内の利用者は400円,学内の利用者は1,500円,学術機関の利用者は5,000円,企業の利用者は10,000円です。
・(株)日立ハイテク製 走査電子顕微鏡 S-3500H
波長分散型X線分析装置(WDX),エネルギー分散型X線分析装置(EDX),二次電子検出器を装備した熱電子銃タイプの走査電子顕微鏡です。二次電子像の空間分解能は電界放出形走査電子顕微鏡には及びませんが,EDX分析に加えて,エネルギー分解能が1桁以上良いWDX分析を行えます。例えば鉄Kβ線とコバルトKα線のように通常のEDXでは重なってしまう近接ピークをWDXでは分離でき,鉄中の微量なコバルトを定量分析することが可能です。正確な定量分析を行うためには,測定面が鏡面研磨された平行平板試料が必要です。1時間あたりの利用料金は,材料工学専攻内,学内の利用者は300円,学術機関と企業の利用者は2,500円です。現状,マシンタイムに余裕のある装置です。
・日本電子(株)製 ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡 JSM-6500F
二次電子検出器,反射電子検出器,EDXを搭載しています。空間分解能1.5nm程度の二次電子像観察を手軽に行えます。1時間あたりの利用料金は,材料工学専攻内の利用者は1,000円,学内の利用者は2,500円,学術機関と企業の利用者は6,000円です。
工学研究科のホームページで研究・産学連携→桂結→共用機器一覧→吉田地区と辿ることで,ご紹介した装置の情報をご覧いただけます。装置を利用いただくためには,共用システム「KUMaCo」で桂結の利用申請を行う必要があります。上記の装置は受託測定を行っておらず,利用者自身に測定を行っていただきますが,操作に習熟されるまで担当技術職員が操作方法をレクチャーしますので,積極的にご活用いただけますと幸いです。
(物理系グループ)