「次世代研究者産学連携ネットワークイベント:産学共創で描くレジリエントな社会」開催報告 ―テクノサイエンスヒル桂構想に関わる取組み(令和7年度の活動成果)―

総合研究推進本部 研究プロモート部門 リサーチ・アドミニストレーター 山﨑有香

 京都大学桂キャンパスでは,イノベーション創出基盤の創成や産学連携ネットワークの構築の基盤となる「テクノサイエンスヒル桂構想」の実現に向け,工学研究科を中心に桂図書館やURAが連携し,研究シーズの可視化・発信するための各種取組み1~5)を展開しています。
 上記取組み推進の一環として,総合研究推進本部(KURA)は,工学研究科と連携して関西イノベーションイニシアティブ(KSII)との共催で,令和4年からこれまでに,企業・大学の理工系女性研究者や次世代研究者による産学連携ネットワークイベント「桂ジェネ」「Meジェネ2)」「Fostering桂」「Transform桂」「BX 桂3)」「Resilience桂」を開催してきました。
 これまでの「桂の庭」関係の取り組みにおける工学研究科・次世代学際院(iRING)との連携を更に強化するため,工学研究科と相談し,令和7年度からはiRING所属の先生方にもイベントの企画段階から加わっていただきより深く連携して取り組みました。イベントの開催趣旨は,次世代研究者に相互議論の場を提供し,産学ネットワーク構築や人材育成を図ることとしています。更に,従来の基礎研究に重きを置いたイベントに加えてより社会実装を見据えた連携の必要性を感じ,これまで年に2回開催してきた産学連携ネットワークイベント(桂イベント)を1回とし,もう1回は産学界との直接的なコミュニケーションを通じて,連携のきっかけを作る場を提供することにしました。
 1回目のイベントとしては,KSIIにも企画に加わって貰い,研究者に「気づき」と共に産業界との距離感短縮を図るためのネットワークイベント「産学共創で描くレジリエントな社会4)」を企画しました。開催場所も桂キャンパスを離れ,昨年9月にアイデアやイノベーションを生み出すための共創拠点としてオープンした,グラングリーン大阪JAM BASEにて開催しました。新施設のツアー後に,本学の研究者とスタートアップや研究シーズとの連携に関心が高い企業(大手ゼネコン・インフラ関連企業など10社)から19名の開発・技術部門の方に参集いただき,「レジリエント/災害対策」に関するテーマで研究発表およびワークショップを行いました。研究発表(画像1)では,工学研究科の都市社会工学専攻・社会基盤工学専攻,工学基盤教育研究センター,および防災研究所からそれぞれ1名の計4名の若手の先生方に講演いただきました。工学研究科 石塚師也講師から「合成開口レーダーの観測・解析技術の高度化によるシームレスな地表変動推定」について,岩井裕正准教授からは「防災・地球環境問題と“海底地盤工学”の関わり~海底地盤を聴く・視る・触る~」について,植村佳大助教からは「不確実性を考慮した構造物の地震応答評価のためのハイブリッドシミュレーション技術の高度化」についてご講演頂きました。また,防災研究所 田中智大准教授からは「気候変動による水災害リスクへの影響評価と適応」についてご紹介いただきました。

(画像1) 研究発表の様子

その後の4つのセクションに分かれてのワークショップ(ディスカッション)(画像2)では,前述の講演に関する技術的な内容等に関して企業側のリアルなニーズと研究者のシーズがぶつかり合い,登壇の先生方からは,『異なる分野の知識や視点からのコメントや社会実装に向けた企業側のニーズなど学会などでは得られない「気づき」が得られた』との感想を頂きました。更にイベント後に実施した参加企業へのアンケートでは,研究者との意見交換や技術相談を希望される企業もあり,また次年度もこのような企画を希望するとの声も寄せられました。
 2回目のイベントとしては,テーマ策定の段階からiRINGの先生方と「2050年の目指すべき姿」について議論を重ね,持続可能な未来への鍵となる『炭素循環』を選定し,登壇者には,本学および京大発スタートアップ企業から,炭素循環社会の実現を加速する革新的技術を有する研究者を各3名づつ招聘。企業からは,昨年11月に「KPMG Global Tech Innovation」世界大会で優勝された,ライノフラックス株式会社の間澤敦CEOをはじめ,株式会社OOYOOのRalph Nicolai Nasara CTOおよびSymbiobe株式会社のGeoffrey Liou CTOに,また本学工学研究科からは小林和弥助教(社会基盤工学専攻),村中陽介助教(化学理工学専攻),鈴木肇助教(化学理工学専攻)にご登壇いただくよう企画しました。また,イベント名としてはCO2を回収・濃縮しカーボンリサイクル技術により再資源化・利活用する炭素循環の意味合いやXを頭に持ってくることで未知・未解決的な意味合いを込めて「CO2 Xcycle桂5)」としました。企画にあたって学術的な深みと産業界のニーズをいかに高い次元で融合させるかに苦労いたしましたが,密度の濃い共創の場を提供することが出来ました。

(画像2) ワークショップ(ディスカッション)の様子

 本イベントシリーズは,最新の政策や技術動向に即した議論の場を創出することで,産学ネットワーク構築の深化と次世代人材の育成に寄与することを目指しています。今後も産学が一体となって未来を構想するための基盤を提供し,社会の発展に貢献してまいります。

参照:
1) 令和5 (2023) 年度 京都大学図書館機構長賞「桂図書館における学術研究支援機能の展開「桂の庭~京都大学桂図書館研究シーズ・カタログ」:研究の展開をサポートする新しい試み」桂図書館
 (https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/about/1398532
2) 京都大学工学広報 No. 81(2024.4)
 “「京都大学女性研究者産学連携ネットワークイベント:Meジェネ」開催報告―テクノサイエンスヒル桂構想に関わる取組み (令和5年度の活動成果) ―” 
  学術研究展開センター リサーチ・アドミニストレーター 下郡 三紀
 (https://www.t.kyoto-u.ac.jp/publicity/no81/news/yqq81h
3) 京都大学工学広報 No. 83(2025.4)
 “「京都大学次世代研究者産学連携ネットワークイベント:BX桂」開催報告―テクノサイエンスヒル桂構想に関わる取組み (令和6年度の活動成果) ―”
 学術研究展開センター リサーチ・アドミニストレーター 下郡 三紀
 (https://www.t.kyoto-u.ac.jp/publicity/no83/news/r5scq6
4) 「京都大学大学院工学研究科・KSII連携イベント:産学共創で描くレジリエントな社会」
 (https://www.research.kyoto-u.ac.jp/blog/act20251023/
5) 「京都大学 次世代研究者 産学連携ネットワークイベント:CO2 Xcycle桂」
 (https://www.rac.t.kyoto-u.ac.jp/ja/news-events/events/ind-day2025co2xcyclekatsura