構造実験からともに学ぶ

技術係長 藤平剛久

 2009年の採用以来,建築学専攻の構造実験支援に携わっています。学生時代から建築に関わる仕事を志し,現在の仕事に至りました。大学でも建築学を専攻し,建物見学や講演に出かけるなど建築に親しんできました。当時は設計に憧れる一方で,「構造」の視点で深く見る機会はあまり多くなかったように思います。そのため,現在の仕事に就いた時は不安もありましたが,先生や先輩,学生に支えられ,学びを重ねながら進んでこられたと思います。
 私の業務は,主に「教育支援」と「研究支援」です。教育支援では,実習実験を担当し,学生が材料に触れて性質や強さを体感的に理解できるよう,教員と連携して指導しています。研究支援では,学位論文や共同研究における鋼構造・木造の実験をサポートしています。柱や梁などの構造部材を再現した試験体に力を加え,変形性能や安全性を検証する実験です。学生とともに分析や検討を重ねる中で,担当教員のご指導のもと論文発表の機会にも恵まれ,実現象を把握する難しさと奥深さを実感しています。
 構造実験は,一つのテーマに数週間から数か月を要します。実験作業はクレーン操作や高所作業,試験体の設置や計測機器の取り付け,予備加力や本加力など肉体的な大変さもあるため,手戻りがないよう事前に学生と作業計画を確認して進めます。最初は指示を待っていた学生が,実験が進むにつれて自ら考えて取り組むようになり,成長していく姿を見守れることは,嬉しい場面の一つです。また,普段目にすることのない柱や梁が壊れる瞬間を体感することは,学生にとって非常に貴重な経験ではないかと感じています。安全で安心して取り組める環境づくりを,これからも心掛けたいと思います。

鋼材の柱の構造実験

 近年は,建築デザインの教員とも連携を広げ,竹材を用いたアーチトンネルや仮設の日除けベンチの設計施工を,学生とともに実践してきました。制作チームを立ち上げ,学生の発想豊かなデザインを活かす構造や施工方法について議論を重ねました。現場でともに手を動かし,アイデアが形になる過程から完成の喜びまでを皆で味わえたことは,何ものにも代えがたい経験として強く記憶に残っています。
 これまでの経験を振り返ると,現場には,シミュレーション技術だけでは捉えきれない材料の重さや変形,施工上の制約や部材の取り合いなど「リアルな手触り」があります。私自身,実際に材料に触れ,状態を確かめ,手を動かして形にするプロセスを重ねることで,構造への理解を深めてこられたと感じています。
 小さな興味から始めたことが,実際に手を動かす中で新たな学びへとつながるように感じます。一人では難しくても,仲間と試行錯誤を重ねるうちに形になり,その上に立ってみて初めて気づくものがあるように思います。学生という限られた時間の中で実物に触れ,考えながら試す経験は,将来社会に出た時の基礎となり,自身の判断の拠り所になるのではないかと感じています。
 今後も学生が実物に触れ,感じ,考える機会をつくりながら教育研究活動を支え,ともに成長していきたいと考えています。

竹材を用いた仮設の日除けベンチ

(京都大学総合研究推進本部 兼 工学研究科技術室)