新しい図書館の姿

桂図書館長 岸田 潔

Kishida202007302 この4月から桂キャンパスにオープンしました桂図書館の館長を務めています。友人達に図書館の仕事をすることを伝えると,「大丈夫か?」「図書館に行っていたのか?」と冷やかされています。確かに,電子図書館は利用するが,図書館に行くことはほぼありませんでした。子供が小さい頃は,よく地域の図書館には本を借りに行きましたが,図書館に留まって何かをするという事はあまりありません。学生時代も借りに行くことが主で,そこで何かをするという事はありませんでした。「新しい図書館を目指す」と友人達に言うと,「新しいという事は以前に何かあったのか?君にはないだろう。」と言われる始末です。
 図書館は静かに本を読む場所,学習する場所と理解していました。本を借りに行って物音を立てるとにらまれる,というイメージでしたが,今の図書館は違った側面を備えています。


[メイン3室]
 桂図書館には,通常の閲覧書架,学習スペース以外に,オープンラボ,リサーチコモンズ,メディアクリエーションルームの3室を有しています。桂キャンパスに位置することから,研究支援が中心となると考えています。オープンラボ(写真1)やリサーチコモンズ(写真2)は,研究室空間とは異なる場を提供し,学生さんの知的活動を促すだけでなく,学外研究者との交流の促進,産学連携を促進する場を提供すると考えています。是非,多くの皆さんにご活用いただき,“静かに本を読む”図書館でワイワイガヤガヤ交流いただき,新たな知の創出を目指していただければ幸いです。また,メディアクリエーションルームは,現在“準備中”の状況ですが,今年度中に機材がそろい,皆さんの研究を紹介する映像作成支援等が可能となる予定です。

オープンラボ リサーチコモンズ
オープンラボ(写真1) リサーチコモンズ(写真2)

 

[可視化・情報発信]

 産学共同実用化促進事業「桂図書館を起点としたテクノサイエンスヒル桂構想の実現」(図1)が,工学研究科,桂URA,桂図書館の連携のもと推進されています。京大・工学の“研究のタネ”を桂キャンパス全体を使って可視化・情報発信を目指すものです。桂キャンパスでは,日々,世界最先端のサイエンスとテクノロジーが融合した研究がなされています。既に成果が出た取り組み,これから成果を出そうとする取り組み,いずれも,次の研究に向けての“研究のタネ”です。新たな研究を実施するには,新たな枠組み,異なる横のつながりが必要です。「隣は何をしている?」では,勿体ない。我々桂キャンパス構成員だけでなく学外研究者,一般市民に至るまで,多くの人が “研究のタネ”に桂図書館・桂キャンパスで触れられるように進めていきたいと考えています。「展示」「動画」「web」「イベント」の4つのメディアを駆使し,研究の狙いと研究者が必要とすることが一覧でき,さらに誰でも研究に係る方法を知ることが出来る,「京大・知とシーズ・カタログ(仮題)」を進めていきます。スタッフの皆さんは,“欲しいもの”を探せるだけでなく“想定外”のものと出会える場を作りたい,との考えで,このカタログの作成に取り組んでいます。研究の可視化・発信には,「リアル」「触れる」「たくさん」「常に最新」をコンセプトに,桂図書館・桂キャンパスの全てを展示場と考え,研究成果のテストフィールド・実装の場とし,キャンパスを歩くだけで,桂図書館を訪問するだけで“研究のタネ”に出会えることを目指していきます。これらの活動を通じ,桂図書館は新たな学術分野を生み出す研究図書館,“研究のタネ”に出会える図書館を目指していきます。

テクノサイエンスヒル桂構想ポンチ絵
桂図書館を起点としたテクノサイエンスヒル桂構想の実現(図1)

 

[研究データマネジメントの推進]

 桂図書館は,エリア連携図書館として全学図書館機構のネットワークの一翼を担う図書館です。オープンアクセス,オープンデータを前提としたグローバルな取組が世界で加速する中,京都大学図書館機構は,我が国のオープンサイエンスの旗振り役としての役割を担っています。桂図書館においても,研究成果の発信,研究データ管理の実践的な取組を実施しなければなりません。研究データの管理・公開促進は,得られた研究成果・データに対する新たな発見,新たな気付きにつながるものと考えています。京都大学で実施された様々な研究プロジェクトで得られたデータを公開することで,「そんなデータが得られるなら,共同研究を一緒にして欲しい」というようなことにつながることが考えられます。研究データの流動だけでなく,人との交流が促進すると考えられます。それも世界レベルで。研究データの管理は,研究公正上必要不可欠なことです。「教育研究活動の透明性を確保しながら,京都大学のプレゼンスを強化する」が,研究データの管理・公開促進の目的であると考えています。既に,「京都大学研究データ管理・公開ポリシー」は制定され,公開されています。では,実際にどうするのか?桂図書館が先駆的に“実践”を進めていければと思っています。工学研究科の皆さんには,少しご負担をおかけするかもしれませんが,「研究を守り」「研究を発展させる」ためのものであるとご理解いただき,ご協力いただければ幸です。

 桂図書館は,「静かに本を読む場所」から「戦略的に研究を進める場所」といった幅広い役割を担う図書館です。いろいろな場面で活用いただければ幸です。旧来の図書館の像を守りつつ,時には壊しつつ,「研究者の交流の場」「研究のタネとの出会いの場」としての研究図書館として新たな図書館像を模索していきます。1階の自動販売機には,大嶋研究科長ブレンドのコーヒーがあります。コーヒー片手に憩いの場としても是非ご活用ください。


(都市社会工学専攻 教授)

参照:
京都大学桂図書館
https://www.t.kyoto-u.ac.jp/lib/ja

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京都大学研究データ管理・公開ポリシー

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_policy/kanrikoukai

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