フランスからみた京都大学,経験談を添えて

電気工学専攻 講師 細江 陽平

顔写真_細江_スーツ 京都大学との縁が私にできたのは,2005年に工学部電気電子工学科へ入学したときです。その後,修士課程,博士後期課程へと進学,修了し,2013年に助教として着任,2020年に講師へ昇任しました。本学に所属している期間は,父の仕事の関係で県外に出ていた時期を除くと,故郷の岐阜県で過ごした期間よりすでに長くなっております。そのように本学純粋培養に近い私ですが,2018年にジョン万プログラムという海外派遣事業の支援を受けてフランスへ約9ヶ月間研究留学しましたので,本稿ではそのときの経験と,そこで感じた本学の特徴等について簡単に紹介させていただきます。
 私が派遣先として選んだのは,トゥールーズにあるLAAS-CNRSという研究所でした。もともと研究でお世話になっていた研究者が所属されており,研究を加速させるため,一時的に拠点を移して研鑽を積みました。欧米へ研究留学された経験がある方なら同意いただけると思うのですが,本研究所も例に漏れず組織の中の人間関係がフラットで,毎日いたるところで身分や職位に関係なく議論や雑談が交わされていました。あんなに話してばかりなのに,研究成果としてのパフォーマンスは並の日本人より高かったりするので侮れません。私の共同研究者も,研究所を構成する部門の長につくまで出世しており,本来なら管理業務で忙しいところ,多くの時間を議論に割いてくださいました。そのおかげで,私が現在主として取り組んでいる,実対象の確率的振る舞いを考慮可能な自動制御を実現するための理論整備に関する研究について成果を上げることができ,論文掲載につながりました。日仏の関係各位に感謝しております。
 フランスでの経験談は書き出すと紙幅が足りませんのでそこそこにして,続いて(私が思う)本学の特徴について記します。まず,私が1番に挙げるのは,本学の基本理念にもなっております,研究の自由と自主が文化として深く根付いている点です。私が上記の研究を開始した当時は所属する研究室に確率論に関する知見がなく,その芽が出るまでに長い時間を要しました。いつ成果に結びつくかわからない長期的な視点での研究は,本学,そして理解のある現上司のもとでなければ続けることができなかったと思います。また,私が恩恵を受けたジョン万プログラムを含め,そのような研究活動を支える制度が充実していることも,自由の学風を重んじる本学の特徴が表れている面の1つではないかと思いました。一方,フランスの研究所の方が進んでいると感じた点は,やはりコミュニケーションの多さでした。現在は時勢的に対面でコミュニケーションをとることが難しい状況ですが,教職員がゆとりを持てるようになり,そのゆとりを他の教職員や学生とのコミュニケーションに使えるようになれば,日々の刺激となって,組織としての能力もさらに向上するかもしれません(私の勝手な想像ですが,フランスでは“つまらないこと”はやらず,みながそうであるためそれが許容され,結果として“おもしろいこと”に時間を割くゆとりが生まれ,活力につながっているようでした)。

(電気工学専攻)