情報センターでの業務を振り返って

技術専門職員 浅野 義直

浅野様 私の所属する工学研究科附属情報センターは,工学研究科の情報基盤の運営を行う組織として2002年5月に設立されました。私は翌2003年4月に技術職員として採用・配属され,今日まで情報技術者として業務に携わってきました。配属当初は情報センター設立から間もない時期で,何から手を付けていこうか手探りの状態でした。当時,センター内では自組織のことをよく,「よちよち歩き」と形容していたものです。ただ逆に実績がない分,自由に何でも挑戦してみよう,という雰囲気がありました。それから約17年,情報センターは周囲の多大なご協力とご理解のもと,多数のサービスを提供する組織に成長しました。以下では,私が微力ながら関わった業務の一部を振り返りたいと思います。
 2003年当時,工学のWebサーバや事務部のメール・ファイルサーバは外注業者が管理していて,運用コストがかさんでいました。ソフト自体も有料で,ライセンス数超過により繋がらなくなることもしばしばでした。これでは立ち行かない,ということでサーバマシンを購入し,システムの移行と自前での運用をはじめることにしました。OSは無償のLinuxを使用し,設定も自分で行います。それまではソフト開発の経験はあれど,サーバ構築を業務で行ったことはありませんでしたから,マニュアルを読み,ネットを検索しながら,試行錯誤を繰り返しました。何とか動くものができ,無事に運用を開始したときは,やっと業務が動き出した,という思いでした。これ以降,情報センターではサーバ運用を継続しつつ,新たなサービスのためのシステム開発・導入を進めていくことになります。
 2004年には工学研究科の移転に伴い,情報センターも桂キャンパスにやって来ました。桂には電光の時計台と大型LEDビジョンがあり,その操作を情報センターが引き受けることになりました。また,この頃までに工学部オンラインシラバス,工学研究(現在の工学研究成果データベース)などのシステムも引き取り,運用を行っていました。このように運用システムが多くなるのは良いのですが,一方で人員や予算は簡単には増えない,という課題が浮上してきました。余力が無いのは確かですが,それを理由に新しいサービスを断念したり,既存サービスの質を落としたくありません。そこで考えたのが徹底した文書化です。システムを運用しだすと利用者から継続的に問い合わせが来るようになりますが,件数が多くなると,開発業務に手が回らなくなります。そこでマニュアルを丁寧に作成して公開し,FAQなども掲載することで,問い合わせ件数を減らすことにしました。また,内部でも技術文書をきっちり残して共有することで,問い合わせ対応や新規開発・障害対応などあらゆる業務を効率的に行えるようにしました。その後,技術面でも統合認証を導入して異なるWebサイトで同じIDが使えるようにしました。これは利用者だけでなく,システム運用側にとってもユーザ管理を一元化できるというメリットがあります。なお,この考えは全学に引き継がれ,SPS-ID/ECS-IDでほとんどの学内システムを利用できるまでになっています。
 それから現在に至るまで,たくさんのシステムを導入してきましたが,常に運用の合理化・効率化を考え,サービスの量と業務量が比例しないようにしてきました。その結果,今日のように多くのサービスを提供できるようになったことは非常に良かったと考えています。
 昨今では全学の提供する各種サービスも充実し,クラウドの活用も進むなど,環境が大きく変わってきています。このような環境の変化に適応しつつ,当初の「自由に何でも挑戦してみよう」を忘れることなく,今後も業務に邁進して参りたいと思います。

(附属情報センター)