教員となった今,博士後期課程をふりかえって

電子工学専攻 2018年3月 博士後期課程修了 小林 拓真

 

小林様 本記事では,私が京都大学での博士後期課程をふりかえって,特に貴重であったと思う経験についてご紹介したいと思います。参考までに,私の博士後期課程修了後の略歴は以下の通りです: 京都大学大学院工学研究科・特定研究員→東京工業大学フロンティア材料研究所・研究員→ Department Physik,FAU Erlangen-Nürnberg・日本学術振興会海外特別研究員→大阪大学大学院工学研究科・助教(至現在)。

 私が工学研究科の博士後期課程に在籍し,特に有益であったと思うのは,以下の三点です:
1.「オリジナリティある課題に取り組める」
 独創的な課題に取り組める点(また,その方法を学べる点)は,博士後期課程の最大の醍醐味だと思います。もちろん,大枠の研究テーマにはある程度の制約もありますが,博士後期課程にもなると自身でその取り組み方や方向性を主体的に決定できます。つまり研究のスタイルは多様であり,したがってそのアウトプットも千差万別です。寄り道をすることもできますし,納得のゆくまで一つの課題を追究することもできます。結果として,時には予想もしない大発見をするチャンスもあります。
2.「進路・環境を自在にアレンジ,決定できる」
 自身の関心,あるいは需要に応じて,進路・環境を自在に決定できるのは,博士後期課程進学の大きな強みです。たとえば私の場合,京都大学在籍時は実験メインで研究に取り組んでおりましたが,その後は東京工業大学にて理論・計算科学の分野で研究を行い,エアランゲン大学(ドイツ)では両経験をフルに活かして固体物理の研究を行いました。今年一月からは大阪大学に着任しましたが,ここでも現在に至るまでの経験が活きることを確信しています。このように進路をフェーズによって柔軟に選択し,つねに熱意をもって仕事に取り組むことができています。
3.「自然に幅広いコネクションをつくれる」
 研究を進めていれば,学会や共同研究の機会を通じて,組織外とも自然にコネクションをつくることができます。このように形成したネットワークは,たとえば前述の進路選択の際にも,確実に活きてきます(少なくとも私は,周囲の方々のサポートに恵まれ,初めて柔軟な進路選択ができています)。また,同年代の研究者には,学会で会う度にとても良い刺激をもらえます。こうした交流を通じて新しいアイデアが生まれたり,共同研究が開始するのは,とても刺激的でワクワクする瞬間です。

 このようにふりかえると,在学時に多くの貴重な学びや経験があり,それが現在に繋がっていることをあらためて認識いたします。在学中にお世話になった先生方を初めとするすべての方々にこの場を借りて感謝申し上げます。

(大阪大学 大学院工学研究科物理学系専攻 助教)