長尾文庫
配置場所
桂図書館 1階閲覧室 南側壁面書架
点数
- 和書:4,664冊(中国語、韓国語書籍44点を含む)
- 洋書:306冊(英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、アラビア語書籍)
- CD-ROM:7枚
目録
長尾文庫目録 [Excel]
- 長尾先生の思索の痕跡である、資料への書込・付箋・頁カドの折の有無を受入時に記録し、別途保管しています。
該当する図書は上記目録より確認することが可能です。 - 京都大学蔵書検索 KULINEより、キーワード検索を行うことも可能です。
概要
本文庫は、京都大学元総長・名誉教授である長尾真先生(1936-2021)から、自宅の蔵書約5,000冊をご逝去の直前に京都大学桂図書館に寄贈頂いたものです。情報学・言語学等の専門書籍から、ご趣味の書道の書籍、また哲学・宗教をはじめとする教養全般にわたる幅広い内容です。
長尾真先生は、情報学という学問分野を切り拓くとともに、後進の育成、大学運営、学術の振興発展等、多岐にわたる総合的な貢献をなさいました。この文庫には「自己を律し全人的に生きたい」と仰っていた先生の魂が宿っており、桂丘陵の地から「地球社会の調和ある共存」を願っておられます。
長尾真先生のご略歴・業績
長尾真先生は1936年10月4日、三重県の神職の家にお生まれになりました。1959年3月に京都大学工学部電子工学科を卒業、1961年3月同大学院工学研究科修士課程電子工学専攻を修了され、同大工学部助手、講師、助教授を経て、1973年10月に同教授となられました。1986年大型計算機センター長、1995年附属図書館長、1997年工学研究科長・工学部長の要職を経て、同年12 月から2003年12月までの6年間、第23代京都大学総長を務められたのち、京都大学名誉教授の称号を受けられました。
先生は、永年にわたり情報学、特にパターン認識、画像処理、自然言語処理、機械翻訳、電子図書館に関する研究、教育に精励され、多くの研究業績をあげられました。パターン認識の分野では初期の郵便番号の自動読み取り装置に使われたオートマトンモデルを用いた手書き文字の認識、画像処理の分野では世界に先駆けてフィードバック解析機構を導入した顔画像認識、自然言語処理の分野では現在日常的に使われている日本語ワープロや文献検索システムなどの基となる日本語の形態素解析法、重要語抽出法、機械翻訳の分野では昭和57年から4年間科学技術庁の機械翻訳プロジェクトを推進するとともに、アナロジーによる機械翻訳という新たな翻訳方式を提案されました。また、日本認知学会会長、アジア・太平洋機械翻訳協会会長、電子情報通信学会会長、言語処理学会会長、情報処理学会会長等多数の学会の要職を歴任し、学界の発展に大きく貢献されました。先生の研究成果はいずれも国内外で高く評価され、その業績に対して1993年IEEE Emanuel R Piore賞、1997年電子情報通信学会功績賞、情報処理学会功績賞、紫綬褒章、1998年人工知能学会業績賞、2003年国際計算言語学会(ACL)Lifetime Achievement Award、2005年日本国際賞を受けられています。
京都大学総長在任中は、大学内の諸問題の解決に尽力されました。教育・研究組織の整備として、大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、情報学研究科、生命科学研究科、地球環境学堂・学舎といった従来の学問の枠を越えた先進的かつ意欲的な教育・研究を行う独立研究科を設置されました。また、キャンパスの移転及び整備について、京都大学の永年の課題であった新キャンパスの実現に向け学内の意思統一を図り、京都市西京区のこの地に、最先端の研究を行い景観や環境にも配慮した地域社会と協調する桂キャンパスを実現されました。
京都大学退職後は、情報通信研究機構理事長、国立国会図書館長、国際高等研究所長、京都府公立大学法人理事長等、多くの要職を歴任されました。また、教育研究や大学行政等における顕著な業績が評価され、2008年文化功労者、2018年文化勲章を受けられました。
*「概要」及び「長尾真先生のご略歴・業績」は黒橋禎夫教授にご執筆いただきました。